ヘンリク
「す、すまない。怪我はないか? 背中を打ちつけてしまっただろう。痛みは?」
ユーリア
「ええと、大丈夫です」

倒れ込んだときに衝撃があったのは事実だが、
それらがどこかへ吹き飛んでしまうくらい
今の私は動転していた。

ユーリア
(どうして心臓の音が鳴りやまないの)

それだけではなく、顔が熱くてたまらない。

暗闇にまぎれているおかげでお兄さまには
わからないかもしれないが、間違いなく
赤くなっているはずだ。

ヘンリク
「私につかまって。ゆっくり起き上がろう」
ユーリア
「は、はい」

身体を離したお兄さまが先に立ちあがり、
手を借りて上体を起こす。

私が体重をかけてしまってもびくともせず、
お兄さまは力強く、しっかりと支えてくれた。

不意に、抱きしめられたときの感触がよみがえる。

ユーリア
(今まであまり意識したことがなかったけれど)
ユーリア
(……お兄さまは男の人、なのよね)