彼女のアルバイト先、その外で我は彼女の様子を見つめていた。
あくまでもこっそりと、バレないように。
……また、ため息をついておるな。
最近の彼女は、我の見えないところで物憂げな表情を浮かべる事がある。
その原因は……――
声に振り返ると、呆れ顔の狐春がおった。
お、おお……桃嘉殿もおったとは……。
こ、こやつら……我のストーカーか? いや、今はそれよりも……。
今の我は、妖として存在しておる。あくまでも彼女の妖として……。
だが、我もこのままでいいとは思っていない。
真剣な瞳を2人に向け、堂々とそう宣言する。
狐春は安心したように笑みを浮かべ、それは桃嘉殿も同じであった。
我と狐春がじゃれつく中、桃嘉殿が呟くように言う。
……桃嘉殿?
温かい言葉の中に不穏なものを感じて、胸騒ぎを覚える。
これから何が起きるのか……。いや、何であっても立ち向かうだけじゃ。
愛しい者と幸福な未来を歩むために――。