聖夜・オディロ・柚木永・天編
前日譚Short Story【色とりどりの愛を求めて】
「失礼します。聖夜さん、本日の報告書です」
「ありがとうございます。すぐに確認しましょう」

彼女から報告書を手渡され、そこに視線を落とす。
……ふむ。簡潔でいて分かりやすくまとまっているな。
――彼女が実働部隊に配属されてから、11ヶ月と21日。
最初のころはまとまりがなく、ただただ長いだけの文章だった。
しかし、今や完璧。さすが私の愛する人。
……いや、仕事において私情を持ちだすのは彼女に対して失礼か。

「こちらで問題ありません。お疲れ様でした」

にこりと笑みを浮かべ、小さく会釈する彼女に手を伸ばして――
さっとその手を取られてしまう。

「聖夜さん、仕事中です。頭を撫でないでください」
「今、私は貴方に【お疲れ様でした】と声をかけました。その瞬間から、貴方の今日の仕事は終了です」
「でも、まだ退勤の時刻じゃ――」

――と、その時。
私と彼女のスマホからアラーム音が鳴り響く。

「退勤の時刻ですから――」
「ぁ――」

返事を待たず、彼女を抱き寄せる。

「で、でも、ここは職場ですし……!」
「こういうシチュエーションもいいでしょう?」
「はあ……。そういう、なんていうか……シチュエーションを求めるのも恋愛体質だからなんですか?」
「ふふっ。そうとも言えますし、そうではないとも言えます」
「どっちなんですか」
「貴方だからこそ、と言っておきましょう」

私の腕の中で考え込む彼女を抱きしめ、甘いひと時を堪能する。
彼女だからこそ、様々なシチュエーションの中で愛を感じたい。
色とりどりのときめきに、胸を震わせて……。