秋月香羊・天編
前日譚Short Story【約束】

レイカの件で星絆が昏倒して、数週間が経過した頃。
星絆が目覚めて、とりあえずは一安心。
ただ……。

「私も一緒に地獄へ行きます」
「ダメ。あそこにはあの悪魔がいる」
「そ、それはそうですけど……」

聖ヤさんの勧めで、星絆はHOで検査を受けることになった。
ってことで、俺と星絆は成海ヶ浜駅から電車で地獄に向かう。
当然だけど、彼女は留守番。

「これ、置いてくから。聖ヤさんから借りてるスマホ」
「いいんですか?」
「ん。俺はあっちで聖ヤさんに借りる」
「ありがとうございます!
それじゃあ、聖ヤさんのスマホにメッセージを送りますね」
「それはダメ」
「え。じゃあ、このスマホは何のために……?」
「俺からの連絡を受けるためだけのスマホ。
だから絶対にメッセージ送ったりしないで。
あと、当たり前に電話もダメ」
「…………」
「理由は聞かないで。察して」
「……あの、聖ヤさんを信用して――」
「ないよ」
「………………」

……いや、信用はしてるけど。
聖ヤさんが恋愛体質で変態だからいけない。
あの人に彼女を近づけさせたくない。
別に危険視してるわけじゃないけど……なんか嫌。

「あ、進路プリントの欠片が見つかった場合は連絡してきて」
「……わかりました」

彼女の表情が少し曇ったように見えて、それが気にかかった。

「絶対に見つかるから、大丈夫」
「そう……ですよね」

やっと表情が和らいで、ほっとする。
いつになるかわからないけど、俺たちは2人で一緒に身体に戻る。
必ず、2人で……。