久遠桃嘉・神編
前日譚Short Story【私の日常】

――九十九神社。
境内で掃き掃除をしている時。

「桃嘉さん、お疲れ様です。少し相談があるのですが……」
「ああ、神主さん。お疲れ様です。相談とは、なんでしょうか」
「孫にこれをプレゼントしようと思っていまして……。どう思いますか?」

そう言いながら、手に持っているスマホの画面を見せられ――

「あ! これ、とのだ丸のぬいぐるみキーホルダー! 押すと音声が流れ――……」

いけない! とのだ丸に反応してつい以前までの私が!!

「そうそう、そうなのですよ。5才の子には早いでしょうかね?」

ほっ。私の様子には気づいていないようだ……。

「いえ、早くないと思います。きっと喜ばれますよ」
「そうですか! では、これを注文しようと思います。ありがとうございます」
「……スマホからお買い物が出来るのですか?」
「ええ。ものによりますが、早ければ明日には届きますよ」

そこまで進んでいるのか……。

「桃嘉さんは、スマホは持たないのですか?」
「はい。しばらくはいらないと思っています」

それよりも、今は夢のために貯蓄したい。彼女が高校を卒業する頃、一緒に暮らせるように。
――頑張ろう!