伊音響・神編
前日譚Short Story【僕の日常】

――天。
僕は神様に会うため、天へ帰ってきていた。
もう何回も会っていると言うのに、未だに緊張する……。

「響さん、来てくださってありがとうございます」

あれ……? なんか、元気がないような……。

「彼女の事で、あなたにお話があります」
「ぁ……」

思わず声が漏れてしまった。だって、何の話なのか予想がついたから。

「……もう、ですか?」
「ええ」
「…………」
「彼女が天へ昇る時、お迎えは私が――そう決めていました。ですが、あなたが適任でしょう」

桃嘉さまの気持ちを考えると……言葉が出てこない。
ただ、本当に僕でいいのかとは思わない。だから――

「ありがとうございます」

彼女と同じ世界に、同じ存在で、同じ時を……そう望んでいる。
でも、やっぱり……この再会は切ないと思ってしまう。

「彼女もですが、あなたも立派に成長されましたね。誇らしい限りです。私は、この天で2人を迎えましょう」
「はい。行ってまいります」