Story

あらすじ

四方を砂漠に囲まれた熱砂の国――シャナーサ王国
名君と名高い王“ライザール・シャナーサ”の統べる国の一角に、その店はあった。

《ショーサロン・カマル》

《妖美な夢》が見られると有名な其の店では、様々な思惑を持った男たちで夜な夜な賑わっていた。
ある者は一夜の夢を見る為に
ある者は己の私欲と野望を満たす為に
――ある者は、嬌艶の美女と名高いカマルいちの踊り子――“舞妖妃”(まいようひ)を一目見る為に。

ただし、美しい花には“毒”がある。
甘美な香りに夢中になっているうちに、致死量を超えてしまうような猛毒が。

“舞妖妃”にはもう一つの顔があった。
それは“密偵”(スパイ)だ。
美しい花は今日も依頼を受け、密愛の罠に獲物を嵌めていく。


――ある年の7月。
シャナーサ王国で『世界次世代指導者会議』が開かれることになり
思いもよらない依頼が“舞妖妃”の元に舞い込んでくる事となる。

贅の限りを尽くしたヒラール宮殿を舞台に、
《9日間》の凄絶なスパイミッションが幕を開けようとしていた。

「殿下、ご自分の気持ちに素直になられてはいかがですか?」 「さあ、私の目を見て。身も心も、私は全て貴方のモノ――」
蛇のように絡まり逢った毒牙は解けるのか。
今宵、ライラ(一夜)の宮殿で、魅惑のムスクが香り色づく――