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  • ライザール王が私の手を掴む。
    彼は上着を脱ぐと私を寝台へと押し倒した。
  • シリーン 「っ……」
  • 背中をしたたかに打ち付け、一瞬息が詰まる。
    ライザール王は私の上に覆いかぶさると、余裕たっぷりに私を見下ろした。
  • ライザール・シャナーサ 「お前の目的は何なんだ?」
  • シリーン 「え――?」
  • ライザール・シャナーサ 「レイラ・アリ。 お前は、私を本当は嫌っているんだろう?」
  • シリーン 「ライザール様、わたしは――」
  • 疑われている。それもこれ以上ないぐらいに。
    でも、それはお互い様だ。

    貴方のことなんて信じない。
    腹をくくると、私はレイラ様の真似を続行した。
  • シリーン 「っわたしは……ライザール様を、お慕いしております……。
     だから、全部、話して欲しいんです!」
  • シリーン 「わたし、夜な夜なライザール様が出かけることを知っているんです!
     ムスクの香りを漂わせて帰ってくることも……」
  • ライザール・シャナーサ 「ムスク……?」
  • シリーン 「それにライザール様ったらわたしを子供扱いしてばかりなんですもの!
     本当は、わたしなんかと結婚したくないんでしょう!」
  • シリーン 「きっとそうよ! お父様だってこの結婚を家の為に推し進めたんだもの。
     ライザール様だってきっと国の為に――」
  • ライザール・シャナーサ 「そんなことを考えていたのか。
     寂しい想いをさせてすまなかったな、レイラ」
  • とびきり甘い声で囁いて、ライザール王は私の身体に優しく触れていった。
  • シリーン 「ひゃっ……」
  • 耳や首筋に優しくキスをするライザール王。
    その手が、私の胸を、腰を、撫でていく。
    愛しげに、まるで壊れ物を扱うように。

    思わず言葉を失い、没頭してしまいそうになるほど甘ったるく蠱惑的な指先。
    蜜のような囁きに、思わず声が上ずった。
  • シリーン 「っあ……、いきなり、なにを……」
  • ライザール・シャナーサ 「寂しかったのだろう?
     私の誠意を、伝えようと思ってな」
  • す、と目を細めて笑うライザール王。
    声音はとろけるように優しいのに、その目だけは氷のように冷え切っている。

    酷薄な、アンバーの瞳。目が合った瞬間、私は冷水を浴びたように彼の思惑を察した。
    彼は、私を誘惑して情報を引き出すつもりだ。
  • シリーン (嘘、でしょう――)
  • ライザール・シャナーサ 「さあ、レイラ。私を信じるといい。
     どれだけ私がお前を愛しているかを、たっぷりと伝えてやる」
  • シリーン 「っ、ぁ……」