山間の土地に、人々の目から隠れるようにひっそりと暮らす人々がいる。
季封と呼ばれるこの土地で、ひとつの時代が始まろうとしていた。
人は言う、白華の檻をこれ以上広めていくにはどうしたらいいのかと、
人は言う、白華の檻に次の展開はないのかと……。

そんな中、立ち上がる男たちがいた。
俺達が白華の道を切り開こう。
俺達が、ファンの期待に応えよう。
俺が、俺達が白華だ!
そう、今、男たちは熱き志を胸に最後の勝負に出る。

幻灯火 :男たちの目指す先に光はあるのか。
今、白華の時代が始まろうとしていた!

智則  :……幻灯火殿? ……いきなり何が始まったのですか?

幻灯火 :聞いていてわからなかったか?
なれーしょんだ。なかなかのものだっただろう。
今回のために一月ほど脚本を練り、セリフを練習した。

秋房  :一月もやってたのかよ!

空疎尊 :最近こそこそしていると思ったら……。

古嗣  :頭を抱えて悩んでいるようだと、お姫様が心配していたよ。
幻灯火のことだからきっとくだらないことだよ、と言っておいたけれど。

胡土前 :大正解だったわけだな。

アテルイ:どうでもいいが、この勇ましく鳴り響くBGMはなんだ?

幻灯火 :私が選んだ、今回の会議のてーまそんぐだ。
いい曲だろう。『つ~ば~めよ~』

空疎尊 :歌うな!

アテルイ:で? いい加減に話せよ。
俺まで呼び出しやがって、一体なんの用だ。

幻灯火 :ふむ、なれーしょんの通りだ。
【白華の檻】の今後について、皆と腹を割って話し合いたいと思ってな。
まずこの企画書『白華の檻ふぁんでぃすく2 百花繚乱 幻灯火絵巻』についてなのだが……。

秋房  :異議あり!

古嗣  :というか、異議しかないね。

幻灯火 :仕方ない、では別の案を出そう。
名付けて『白華の檻ふぁんでぃすく2 百花繚乱 幻灯火ちまき』!!

智則  :よりひどくなっている……。

胡土前 :そうだ。
幻灯火を海に流すってファンディスクはどうだ。
『百花繚乱 幻灯火す巻き』なんつってな!!

……………………。

…………。

秋房  :さ……さすが胡土前殿!言葉遊びの才も抜群ですね!

智則  :秋房、頬が引きつってるぞ。

空疎尊 :蛇、貴様のくだらん言葉遊びが
この作品の印象を悪くしているのではないのか?

胡土前 :やれやれ、お前も素直じゃねえな、鴉よお。
本当は「くっ……! 我も胡土前のように
洒落たことが言えたなら……!!」とか思ってんだろ?

空疎尊 :ふふ……ここまで我を愚弄するとは、
よほど命が惜しくないとみえる!(巻き起こる風)

胡土前 :お、なんだやっちまうか?
喧嘩だったら喜んで付き合うぜー?

古嗣  :はいはい、大人しくしなさい。
君たちの喧嘩は人のそれと規模が違うんだから。
また宮を壊してしまったら大変だろう。

幻灯火 :うむ、古嗣の言う通りだ。今は大切な会議の最中。
『白華の檻ふぁんでぃすく2 百花繚乱 幻灯火絵巻』をより素晴しいものにし、
【白華の檻】を大いに盛り上げるという使命が私達にはあるのだぞ。

秋房  :お前は『主役』ってところからちょっと離れろよ!

智則  :それに、幻灯火殿。ファンディスクと言いますが
『白華の檻 ~緋色の欠片4~ 四季の詩』は今日発売されたばかりではないですか。

アテルイ:考えてるように見せて、何も考えてねえじゃねえか……。

古嗣  :あははは。
けれど、言いたいことはわかるよ。
この【白華の檻 ~緋色の欠片4~ 四季の詩】を多くの人に遊んでほしい。
僕も、僕とお姫様の恋物語を楽しんでほしいという気持ちでいっぱいだ。

秋房  :お前らは自分のことばっかりか!

アテルイ:はぁ……てめえらいい加減にしろ。
これじゃ話が前に進まねえだろうが。
幻灯火のナレーションを聞く限り、ようは【白華の檻】を
世に広める宣伝について話し合いたいってことだろ。

幻灯火 :うむ。おおむねその通りだ。

秋房  :おお……あのアテルイが仕切ってる……。

胡土前 :アテルイってなあ、すげえ英雄だったんだろ?
そりゃあ、これくらいの仕切りはやるんじゃねえか?

空疎尊 :ふん……噛みつくばかりの狂犬かと思っていたが、
それなりに知恵もあるようだ。

智則  :文武両道というわけですか。流石といえば流石だ。

アテルイ:うるせえな。雑音は無視するぞ。
とりあえず意見を募る。宣伝をするいい方法、
何か思いつくヤツはいねえのか。

幻灯火 :……はい!

古嗣  :うーん……完全にキャラクターが崩壊した挙手だね。
ハキハキしてる幻灯火なんて、幻灯火じゃないと思うのだけど。

アテルイ:…………誰も意見はねえってことだな。

智則  :そして気持ちのいい無視ですね。
どうやら雑音と判断されたようだ。

胡土前 :幻灯火とアテルイは、
なんだかんだ息が合ってるんだよなあ。

秋房  :親友ですからねえ……。

アテルイ:おい、秋房とか言うお前。
意見があるなら堂々と言え。

秋房  :え!? お、俺……!?
え、えーと…………そう、だな。
女性向けの恋愛アドベンチャーなんだから、
攻略対象である俺たちの魅力を伝えることが一番じゃないか?
そうすることで、俺達が登場する【白華の檻】を、よりアピールしていくんだ。

幻灯火 :おお、秋房にしては珍しく正論だ。

秋房  :お前にだけは言われたくない!!

空疎尊 :しかし、どうやって魅力を伝えるつもりだ。
知恵比べでもやるか? まあ我が最も有能であることは火を見るより明らかであろうが。

古嗣  :ふふ……そういうことなら僕に任せてもらおうかな。

智則  :何かいい考えが?

古嗣  :攻略対象とは色恋の攻略の対象となるわけだ。
その魅力を伝えるとなれば、最も簡単な方法はただひとつ。
僕たちの、お姫様への愛を、ここで言葉にして伝えるのさ。
今回のファンディスクで、僕達とお姫様の間に、
どんな素敵な恋が待っているのか、伝えるためにもね。
幻灯火、伝える準備は整っているんだよね。

幻灯火 :ああ、この会議の模様は
り……りあるたいむ? で全国に届けられているからな。

秋房  :幻灯火、それ絶対意味わからないままに喋ってるだろ……。

胡土前 :想いを伝える、か。なるほどいい案じゃねえか。
姫さんを幸せにできるやつは、この俺だけだ。
それを内外に知らしめるいい機会だ。

空疎尊 :くだらぬな……
言葉にせずとも、我の魅力など、
すでに玉依姫にはわかっていよう。

古嗣  :じゃあ、空疎は不戦敗ということで――。

空疎尊 :誰も参加せぬとは言っておらぬわ!

幻灯火 :玉依姫への愛情なら、
私を超える者などいないと断言できる。

秋房  :お、俺だって気持ちじゃ誰にも負けてないぞ!?

智則  :それでは、私も参加しておきましょうか。
今回のファンディスクで『攻略対象』へと昇格したこの私もね。
ふふふ……秋房、もうお前に大きな顔はさせないぞ。

秋房  :俺がいつ大きな顔をしたんだよ……。

古嗣  :彼、結構気にしていたみたいだったからね。
本編のBADEND解説が終わった後も、
「1000年後……1000年後は見ていろ。必ずや攻略対象に!」
とずっと呟いていたくらいだから。

秋房  :しゅ、執念を感じるな……。

幻灯火 :アテルイ。お前も今回のファンディスクでは
攻略対象になのだろう?

アテルイ:あ? ……あー、そうらしいな。
正直、玉依姫なんて女に興味はねえが――
おい、幻灯火、なんだ、そのでけえ狐火は。

幻灯火 :なんでもない。
競争相手は少ない方がいいなどとは思っていない。

アテルイ:言動が一致してねえよ!
まさか俺を亡き者にしようってんじゃねえだろうな!

幻灯火 :なに……!?
アテルイ、いつから読心術を身につけた?

アテルイ:誰でもわかるわ!

智則  :……なんとなくですが、幻灯火殿が一番
暴力的な性格をしているような気がしますね。

空疎尊 :あの男は、本能のままに、純粋に生きている。
言い換えれば何も考えていないのだ。

秋房  :ある意味、恐ろしい天然ボケだな……。

胡土前 :おいコラ幻灯火。
なんでも物騒な方向に持ってくんじゃねえ。
アテルイ、お前も攻略対象ってんなら、
姫さんに伝えたいことのひとつふたつあるだろう。

アテルイ:ち……まあいい。付き合ってやるよ。

古嗣  :では一番手は言い出した僕から。コホン……。

春夏秋冬、いつでも僕は、君のそばにいるよ。
時に君を支え、時に君の全てを奪おう。
とろけてひとつになってしまうような、
激しい愛を君に捧げよう。
受け入れてくれるね、お姫様。

智則  :ほほう、流石は桃色検非違使。
そこはかとなく色気のある言葉ですね。

空疎尊 :桃色検非違使の名はすたれていなかったようだな。

古嗣  :いつの間に定着したんだろうね、その呼び名……。

アテルイ:その通りだから受け入れられたんだろ、諦めろ。

胡土前 :さーて、桃色には負けられねえな。次は俺がいくぜ?

古嗣  :せめて省略しないでくれるかな。

胡土前 :姫さん、冬には世話になったな。姫さんの剣士としての、
人としての、そして女としての生き様、たっぷりと魅せられたぜ。
今度は俺が魅せてやる番だ。俺がいかに、お前に相応しい男か、
そしてお前がいかに、俺にふさわしい女かをな。
今日は、記念すべき日だ。楽しみに待ってるぜ、姫さん。

秋房  :さすが胡土前殿!
男気があふれていらっしゃる!

胡土前 :はっはっは。褒めるな褒めるな。

空疎尊 :サムい言葉遊びがたまに傷だがな。

胡土前 :うるせーっての。
んで、次は誰がいく?

秋房  :で、ではここは僭越ながら俺が!!
家臣でありながら、姫様への愛の言葉を口にするなど、
恐れ多いこととは思いますが、しかし、しかし俺は――!!
って、痛い!?
と……智則!! いきなり拳骨とはどういう了見だ!?

智則  :前置きが長い。さっさと本題に入れ。

秋房  :ちぇ……なんで智則は俺にばっかり厳しいんだ……。

智則  :何か言ったか?

秋房  :な、なんでもない!
それでは……いかせていただきます、姫様!

姫様。あなたはよく、俺が救ってくれたと言ってくれましたよね。
だけど……それは違います。救われたのは、いつも俺の方でした。
俺の差し出した手を、そっと握ってくれたあなたの手の温もりが、
いつだって俺を救ってくれたんです。
俺はいくらでも永遠を誓いますよ。
あなたへのこの強い想いは、ずっと変わることはありません。
姫様。暖かい春を迎え、様々な季節を一緒に生きていきましょう!

……………………。

…………。

秋房  :な、なんだよ……?

幻灯火 :……秋房にしては、
珍しくツッコミどころのない
言葉だったと思ったのだ。

古嗣  :うん。やれば出来るんだね、秋房。

秋房  :俺は普段、一体どんな印象なんだよ。

空疎尊 :うるさくさえずる鈴虫程度の印象だ。

秋房  :虫かよ!?

空疎尊 :……なかなか綺麗な声で鳴くぞ?

秋房  :虫に変わりないだろ!?
なんでちょっと慰めようと思ったんだよ!
その心遣いが逆に悲しいわ!!

アテルイ:人のことを虫扱いしてる場合じゃねえだろう。
お前も参加するんだろうが。

空疎尊 :ふん……仕方ない。
では特別に我の心中を聞かせてやろう。

玉依姫、よく聞け。
我はここで長々と愛を語らうような真似はせぬ。
貴様なら、我の想い、すでに感じ取っているはずだろう。
貴様は我のものだ、他の誰の者でもない。
安心して、我が寵愛の下で、幸せを享受するがよい。

古嗣  :ふふ、空疎らしい言葉だね。

秋房  :ほんと、いっつも自信に溢れてるなあ空疎は……。

空疎尊 :我の生き様が自信となって表れるのだ。
これほど明白な根拠はあるまい。
さあ、次の者。早く済ませろ。

幻灯火 :ならば私が行こう。
玉依姫も私の言葉を欲しているだろうからな。

アテルイ:お前の自信もどこから来てるんだかな。

幻灯火 :私の生き様が自信となって表れる。
これほど明白な根拠はないだろう。

空疎尊 :真似をするな!!

アテルイ:さも自分が考えたかのような言い方してたな……。

智則  :恐ろしい。これが天然か。

幻灯火 :……では、満を持して語らせてもらおう。

玉依姫……私の愛しい人。
お前は私の命を救い、そして魂までも救ってくれた。
その時から永遠に、私はお前のために生きている。
お前のためならどのような困難もはね除けよう。
お前がどのように変わろうと、変わらずにお前を愛し続けよう。
この世には不変のものなどないという。
だがあえて言おう、この胸ある想いだけは
どのような時の流れを経ても変わらずに、お前のもとにあると。

胡土前 :不変の愛、ね……そんなもん、
あるかどうかはわからねえが、気持ちは伝わったぜ。

古嗣  :一途な幻灯火らしいね。
さて後は、今回のファンディスクで攻略対象になった
ふたりだけれど……。

アテルイ:なら、先に俺が行かせてもらう。
あの女に語る愛など持ち合わせちゃいねえが、
言いたいことはそれなりにあるんでな。

智則  :……なるほど。
ではアテルイ殿に先手はお譲りしましょう。

秋房  :姫様を愚弄する言葉あれば、俺が叩き斬る!

胡土前 :阿呆、返り討ちが関の山だ。

幻灯火 :同意見だ。

空疎尊 :秒殺だろうな。

古嗣  :いやいや、瞬殺でしょう。

秋房  :お前らそれでも仲間かよ!?

アテルイ:……ああ、うるせえやつらだな……。

いいか、女。
俺はてめえが嫌いだ。好き勝手綺麗事を並べて、
嘆くばかりで自ら運命を切り開くことのないお前がな。
だが……時折見せる強い意志だけは、認めてやる。
もしその意志を持って、自らの道を進むというのなら……。
その時は女、俺がてめえの背中を守ってやろう。

空疎尊 :……愛の言葉、ではないな。

幻灯火 :だが、誠実さは伝わってくる。

智則  :姫のことを、認めているのですね。
アテルイ殿。

アテルイ:……渋々だがな。

秋房  :じゃあ、最後はお前だな。智則。
お前、普段建て前ばっかりだからな。
こんな時くらい本音で喋れよ。

智則  :建て前ばかりで何が悪い。
お前と違って、立場をわきまえてるだけだ。

古嗣  :今だけは、
その立場を忘れてほしいね。
今日この場所は自らの想いを伝える場なのだから。

智則  :自分の『想い』…………分かりました。

……姫、あなたのことを思い出そうとすると、
私はいつも、幼い頃のあなたの姿が浮かぶ。
最後に見た、あなたが心から笑う姿だ。
あれからずっと……あなたは宿命という檻の中にいた。
幾重にも張り巡らされた宿命があなたの心に鍵をかけた。
私は……俺はずっと、お前の心の鍵を、探し続けていた気がする。
待っていてほしい。必ずお前を、檻から出してあげるから。
その時は、俺に、あの時のように笑いかけてほしい。
きっと俺は、そのためだけに生きているんだ。

秋房  :智則……。

智則  :……少し、喋り過ぎた。

古嗣  :君の想いの裏にどのような気持ちがあるのか、
それはファンディスクでの君の物語で明かされることを、
期待していようか。

アテルイ:よし、これで全員だな。
どうだ、多少は白華の檻の魅力を伝えられたか?

幻灯火 :いや……このような短い言葉では、全く足りない。

胡土前 :同感だね。
大体俺は言葉じゃなく、行動で示す質でな。

古嗣  :僕もだよ。
直接彼女の心と身体に、僕の思いを伝えたいんだ。

秋房  :お前が言うとなんでも変な意味に聞こえるな……。
だが俺だって、姫様への気持ちは伝え切れてないぞ。

空疎尊 :我はむしろ玉依姫の方が、
我らへの想いを伝える場が欲しいと
思っているように感じるがな。

智則  :それは……そうかもしれませんね。
大切な想いは、一方的な宣言ではなく、
真心のある言葉のやり取りの中でしか伝えられないものですから。

アテルイ:……ならどうする。
どうやって『白華の檻』の魅力とやらを伝えるつもりだ。

胡土前 :そこはやっぱ……この【四季の詩】をやって、
俺らとの日々を体験してもらうことが一番じゃねえか?

幻灯火 :ああ、賛成だ。

秋房  :ですね。

空疎尊 :共に過ごさなければ、わからぬものもある。

アテルイ:ふん……あの女にも、
多少は骨のあるところを見せてもらいたいもんだ。

智則  :それでは、姫。
また後ほど。今度は作中でお会いしましょう。

古嗣  :お姫様と過ごす四つの季節、
僕たちはとても楽しみにしているよ。

幻灯火 :ああ。その時はお前に、私の想いを存分に伝えたい。

空疎尊 :我らが紡ぐは、宿命から解き放たれた優しき四季の物語。

智則  :我らが紡ぐは、雪の中に隠された、悲しき救いの物語。

秋房  :姫様! 俺たちはここで、いつでも姫様のお帰りを待っていますからねー!!


END