2014年4月8日
曹操軍「S・M・Nについて話してみよう」
CATEGORY|三国広報部
- あなたはえす? えむ? えぬ?
- ……
- あなたはえす? えむ? えぬ?
- ……
- あなたは……
- もういい!
- よかったです。聞こえていないのかと思いました
- いったいなんだと言うんだ。わけのわからぬことを口走って
- おや? 夏侯惇殿はご存じないのですか?
今のは漢や秦よりもさらに昔、殷や夏といった
古代中国から伝わる言葉だと聞きました
- 殷や夏より伝わる言葉……?
- はい。武人であれば誰もが知っていて当たり前だとか
- な、何だと……
- なんでも古代より伝わる、将たる者こうあるべきだという
武将を表した言葉だそうですが、夏侯惇殿は知らなかったのですか?
- な……
- 知らなかったのですか?
- そ、そんなことは……
- やはり、夏侯惇殿ほどの武人が知らないはずないですね
- あ、ああ……
- なんでも、えすは、情け無用にあらゆる敵を殲滅し
それを至上の喜びとする覇王のこと。
えむは、どんなことがあろうとも何を言われようとも君主に付き従い、
すべてを受け入れそれを喜びとする武人のこと。
えぬは、そんな武人たちが自分たちを心から褒め称えることと聞きました
- ほ、ほお……
- それで言いますと、覇王であられる曹操様は、えす。
主君である曹操様のために仁義を尽くす夏侯惇殿は、
えむ、なのではないでしょうか?
- 俺がえ、えむ?
- はい。そんなえむの中でも、主君のためならば
命すらも惜しまぬ勇将の中の勇将を、どえむ、と言うのだとか
- どえむ……?
- 日頃の夏侯惇殿の振る舞いを見ていますと、まさにえむの中のえむ、
どえむ、というものだと思ったのですが、間違っていましたでしょうか?
- えむの中のえむ……?
- はい。私は日頃よく夏侯惇殿を見習うようにと言われていますので
そんなえむの中のえむであれば、是非学ばせて頂きたいと思ったのです
- そうか……。いや、間違ってはいない
- では、やはり
- ああ。俺は、どえむだ
- そうでしたか。よかったです
- ……
- おや、曹操殿。いいところに
- 曹操様!
- 何の話をしていた?
- はい。ちょうど武人としての在り方を
- 武人としての在り方?
- はい! 曹操様、俺はどえむです!
- ほぉ……
- それで言いますと、曹操様は立派な、どえすです!
- 私が、どえす……?
- はい!
- やはり曹操殿もこの言葉の意味をご存じなのですね?
- いや、先ほど知った。今週のお題だそうだからな
- え? お題?
- なんでも異国の言葉だそうだ。えすは、さでぃずむ。
えむは、まぞひずむ。えぬは、なるししずむ
- 異国の言葉??
- えすは、人や動物等に対し身体的、精神的に苦痛を与えて興奮する者のこと
- なっ!?
- えむは、人や動物等から身体的、精神的に苦痛を与えられて興奮する者のこと
- な、なにっ!?
- えぬは、自分が大好きな者のことだそうだ
- な、な、な……
- 夏侯惇、お前はどえむだそうだな
- なぁーーーー!!!!
- 落ち着け夏侯惇。前にも言ったが、私はナ行しか言えない部下を持った覚えはない
- 私が聞いたものと随分意味が違うようですね
- お前は誰にその話を聞いたのだ?
- はい。郭嘉殿です
- 郭嘉ああああああああ!!!!!
- はぁーい!
- おや、そこで見ていらしたのですか?
- 郭嘉、貴様ぁ!! よくもまた人を謀っ……
- えいっ!
- ぐわぁっ!!
- 郭嘉! いきなり兄者を鞭打つとは何事だ!?
- えーだって、夏侯惇さんさっき自分でどえむだって言ったじゃないですか。
えむはー、人や動物等から身体的、精神的に苦痛を与えられて
興奮する人のことですよ。
しかも夏侯惇さんは、えむの中のえむ、どえむだそうですからね!
- か、郭嘉ぁ、貴様ぁ……
- 大丈夫か兄者! 郭嘉ぁ! 兄者が息も絶え絶えになってるぞ!
- やだなぁ、そんなに悦に入ってるんですか? えいっ!
- ぎゃあああ!!
- だから鞭で打つな!
- やれやれ。郭嘉は間違えなくえすだね
- えすの本当の意味は、人や動物等に対し身体的、精神的に苦痛を与えて
興奮する人のこと、でしたでしょうか? まさに呂布様や郭嘉殿のことですね
- 曹操様はどれに当てはまりますかな?
- 私か?
- えす、でしょうか? それともえむ?
- どうだろうか。私は夏侯惇のように苦痛を与えられて興奮はしないが……
- 曹操様! それは誤解です!
- もー、素直じゃないんだから! えい!
- ぎゃああ!!
- ……
- 夏侯惇にむけるその蔑むような目を見ると、
曹操様はえすなのではと思えてしまいますな
- そうか……
- そういう賈栩殿はどうなのですか?
- 俺かい? 俺は特に何も思わないからなぁ
- 何も?
- 人を痛めつけてどうこうも、人に痛めつけられてどうこうもないさ。
それが仕事ならやるってだけで
- 私もそうです。私と同じような人間がいるとは少し驚きました。
賈栩殿は大丈夫なのでしょうか?
- どういうことだい?
- 人として大丈夫でしょうか?
- ずいぶんな言い様だなぁ。だが張遼も同じなんだろ?
- はい
- だが張遼よ、お前はよく関羽のためならばなんでもしたいと言っているではないか
- 関羽さんですか? はい。関羽さんのためでしたらなんでもしたいです
- その底なしの自己犠牲精神は、えむに通じるものがあるのではないか?
- そうでしょうか……? ああ、やはり私はあの方に関わる時のみ、
人間らしくあることが出来るのですね
- 人間らしくというか、ただのえむだけどね
- ところで、えぬ、というものだけ誰もいないようですが
- えぬ、は自分のことが大好きな方でしたでしょうか?
- 曹操様はご自分のことはお好きではないのですか?
- 憎悪こそすれ好きなど……
- おっと、いきなり空気が重くなりましたな。張遼はどうだい?
- 私もこの身が悲しいと幾度となく思ってきました
- おっと、こっちもか……
- ……
- ……
- はは、暗くなってしまいましたなぁ。
たまには軍議の代わりに自己啓発の演習でもしましょうか?